代替医療の世界に注目している方は、チャーガをご存じではないでしょうか。世界の最北端の地で採れるこのキノコは、免疫力の向上、抗がん性やアンチエイジングの効果があることから何世代にもわたって民間療法として知られています。チャーガの人気が世界的に高まっている今、チャーガを使用する人達による大げさとに見える証言には、果たして学術的な根拠があるのかと疑問に思うかもしれません。
根拠はあるというのが答えです。チャーガの研究はまだ始まったばかりですが、このキノコに関する個人的な経験に基づく証言や言い伝えが、多くの研究によって確認されています。チャーガがいかに役立ち、健康効果をもたらすかを示す学術的な根拠について見ていきましょう。
チャーガと研究
チャーガを直接的に人に用いた臨床試験は少ないということを言っておく必要があります。その理由は、チャーガに対する学術的な関心が本格的になったのが、アレクサンドル・ソルジェニーツィンの小説『ガン病棟』が出版された1968年という、つい数十年前のことだからです。小説は、ソビエトのがん病棟でのソルジェニーツィン自身の体験に基づくもので、チャーガを用いたがん治療に関する記述に関心を持った研究者たちが、このキノコを研究するためにソ連に足を運ぶようになりました。
ロシアと旧ソ連でチャーガの使用状況を観察した研究者たちは、チャーガを使用する人達のがん罹患率が世界平均よりもはるかに低く、多くのソ連の診療所ではがん病棟を設ける必要がないほどであったことをに気づきました。多くのソ連市民が、コーヒーが高価なものということで、代わりにチャーガティーを飲んでいましたが、結果的には気づかないうちにがん発症の抑止につながっていたのです。
研究室での研究では、チャーガが大腸がん、子宮頸がん、肺がんを撃退する効果があり、チャーガにさらされたがん細胞は枯れて死滅することが示唆されています。研究では、チャーガががんと戦う四つのメカニズムを取り上げています。まず一つが、酸化ストレスを和らげる豊富な抗酸化物質で、その延長線上にあるのが、がんを発症する可能性を最初から減らすことです。酸化ストレスとは、フリーラジカルが細胞に衝突して細胞にダメージを与え、細胞を癌化させる危険性があることです。
チャーガはまた、腫瘍細胞を直接殺し、既存の細胞の増殖を防ぐだけでなく、免疫系が自らがん細胞を攻撃して殺すことを促します。研究者たちは、チャーガの抗がん性は、キノコに含まれているトリテルペンによるところが大きいと考えています。トリテルペン化合物は、既存の細胞を傷つけることなく、安全かつ効率的な方法でがんn細胞を破壊することが証明されています。
チャーガの抗ウイルス効果に関するいくつかの学術的研究も行われています。ロシアで行われた研究では、チャーガには単純ヘルペスウイルスの感染から細胞を保護する能力があることが分かりました。別の研究では、チャーガが単純ヘルペスウイルスの細胞内への侵入を防ぎ、細胞膜の融合を防ぐことが分かりました。しかし、この分野の研究はあまり進んでおらず、結論は出ていません。
チャーガの炎症に対する効果については、二つの研究が行われています。一つ目の研究では、チャーガには抗アレルギー作用があり、アレルギーによる炎症に悩む人に効果があることが分かりました。二つ目の研究では、チャーガがネズミの浮腫みや炎症を抑えることが分かりました。チャーガの抗炎症作用は、亜酸化窒素の発現を抑制する仕組みに起因しています。
また、チャーガによる腸の健康面での影響に関する研究も行われています。腸の炎症を抱えているネズミを対象とした研究では、チャーガを摂取させると浮腫みが解消され、粘膜の損傷が軽減され、亜酸化窒素レベルが低下することが確認されました。別の研究では、チャーガが膵炎を撃退する力があることが分かりました。
体力づくりのためにチャーガを摂取している人には、筋肉を使う活動に効果があることを示唆する証拠があります。ねずみにチャーガを摂取させたところ、より長い時間泳ぐことができ、筋肉で蓄積される乳酸が減少しました。これは、チャーガに含まれる多糖類によって肝臓や筋肉のグリコーゲンを増やし、より長く機能が向上したことに起因します。
チャーガは風邪やその他の病気の治療薬として知られおり、研究は免疫系の機能を高める効果に焦点が当てられています。チャーガの子実体から抽出した多糖類には、白血球を免疫調節する作用があることが明らかになり、免疫系のバランスをとるチャーガの機能が証明されました。
チャーガには抜け毛を治す効果があるという声もありますが、現在のところ、これを確認も否定もできる研究はありません。同様に、チャーガによる体重減少の効果に関する研究は一件しかなく、チャーガが体重増加を抑え、血中の遊離脂肪酸、コレステロールと中性脂肪を減らしたことが示唆されています。チャーガが偏頭痛やその他の頭痛を和らげるかどうかについては、現在のところデータはありません。
最後に付け加えると、チャーガの摂取に伴う安全性に関する研究がいくつか行われています。これらの研究から導き出された結論は、長期にわたって過剰に摂取すると有害であるということです。ある研究では、肝臓がんと闘うためにチャーガを過剰に摂取したために腎臓結石を発症した日本人の高齢女性がいました。チャーガはまた、血小板の生成を阻害するため、抗凝固剤を服用している人には問題があり、また、糖尿病患者の中には低血糖を引き起こす可能性があります。
まとめ
チャーガは世界規模での代替医療の分野では比較的新しい存在なので、現在まで言われている効果は完全に検証されている訳ではありません。チャーガを使用している人達は、病気の予防、アンチエイジングや抗がん性の効果があると信じており、予備的な研究でも、これらの効果の多くが本物であるとされています。しかし、確固たる結論はほとんど出ておらず、チャーガの長期にわたる効果についても十分に研究されていません。
チャーガが総合的な健康改善に役立つのは事実ですが、体には個人差があるので、使用する前にしっかりと考え、あらゆる事柄を見極めましょう。常に、信用することに基づいて決断することが体に一番良いです。慢性的な健康問題を抱えている方は、現状を大きく変える前に医師に相談しましょう。慎重になることで、チャーガの効果を得られます。